Sunday, December 15, 2013

壁に描かれた鶴

昔々、中国の揚州に若いあるじが営む小さな居酒屋があった。ある日、みすぼらしいなりの道士がやってきて、酒を所望した。あるじは酒を提供したが、お代は取らなかった。道士は半年もの間、何度となく店に訪れてただ酒を飲んだが、ある日、礼をしたいと申し出て、壁に黄色い鶴の絵を描いた。鶴は、酒を飲んで陽気に手拍子を叩きながら歌う客がいると、歌の調子に合わせて、壁の中で美しく舞い踊った。この鶴が評判となり、店は大いに繁盛するようになった。店は儲かったお金で道教寺院の黄鶴楼を建てた。

 この伝説にはいくつかのヴァリエーションがある。例えば、鶴は歌が聞こえてくると、壁から飛び出して舞った、というものや、数年後に道士がまた居酒屋にやってきて、笛で音楽を奏でて鶴を壁から出すと、それに跨って、いずこかへ飛び去った、といったものである。

 この伝説は落語の左甚五郎物や、小泉八雲が採録した伝説『衝立ての娘』などにモチーフを提供した話なのだろう。

 揚子江沿いに建っている黄鶴楼は李白をはじめ中国の詩人たちのお気に入りの場所である。

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