たぬきのたは、天麩羅の具。つまり、「たねぬきの天麩羅そば」のこと。当初は胡麻油で揚げた烏賊の天麩羅がのっているそばであった。醤油の汁が黒っぽくて、真ん中に汁よりは白っぽい天麩羅があるわけだから、なんとなく狸の顔に見えたのかもしれない。また、衣が大きい割に中の烏賊は小ぶりであったともいい、食べた人はたぬきに化かされた気分だったのかもしれない、いずれにせよ、上にのせる天麩羅からはタネが完全になくなり、いわゆる「天かすそば」をたぬきそばと言うようになっていった。天かすのお店側の呼び名は揚げ玉である。
江戸では、麺の上にごちゃごちゃのせないのを粋としていた。江戸っ子気質はシンプル・イズ・ベストで、たとえば、ねぎまは葱と鮪だけを入れて食べるのを粋とし、豆腐、春菊、椎茸などを加えるのを邪道とする。たぬきそばは伊達の薄着的な江戸っ子気質を表しているといえる。江戸のそば屋は、具をけちったわけじゃあない、と言い張るだろう。
関連
→小間板 (そば打ちの道具)
→たぬき
→食べ物に関する言葉
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