『かちかち山』などの民話に登場する狸は狡猾なので、狡猾な人を狸だとか狸親父という。西洋には従来、狸は棲息していないので、英語で狡猾な人を動物にたとえるときは、 fox 「狐」を用いる。西洋ではイソップ以来、狐は狡猾な生き物であり、 old fox 「じじいぎつね 」といえば、「狸親父」のことである。ただ、日本の昔話では、ちょっとお間抜けな愛嬌のあるたぬきも沢山いる。ただ、狸は畑を荒らすこともあったらしく、そのせいで人間から悪者扱いされていた。
『かちかち山』は、おじいさんが畑にいたずらに来る狸を捕らえて、おばあさんに狸汁にしてくれと頼み、畑に仕事に戻ると、狸はおばあさんに「もう悪さはしない。お手伝いします」と言って、縄を解いてもらうが、その途端に、おばあさんを殺し、ばば汁にして、おばあさんに化け、おじいさんが帰って来ると、「狸汁」と偽って食べさせるシーンがあるが、思うに、シェイクスピア作の『タイタス・アンドロ二カス』で復讐に人肉を調理して食べさせるモティーフに似ている。タイタスはタモーラに復讐するため、タモーラの息子の肉を偽って食べさせる。愛する者の肉を偽って復讐すべき相手に食べさせるというモティーフは、広大なユーラシア大陸には、ほかにもありそうだ。
店先に置かれる狸の置物は「他 (店) をぬく」で縁起物とされている。
東アジア原産のたぬきはヨーロッパに棲息しないため、英語での呼び名はなかったが、あらいぐまに容姿が似ていてイヌ科の動物であることから raccoon dog と命名された。あらいぐまは北米・中米・西インド諸島に棲息している。 OED の raccoon dog の項目の一九七四年の引用文は日本のたぬきについて記したものである。
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