apple
Apple はゲルマン語で、血縁語は
スラブ語派、バルト語派、ケルト語派に
見つかるが、古典ギリシャ語やラテン語には
見当たらない。それでも印欧祖語は
再建されている。
PIE abel- “apple.”
Apple の原義は「実」だったが、
のちに限定的となり、
「りんご」を指すようになった。
古英語 (アングロ・サクソン語) に
「実」を指す言葉は二つしかなかった。
1. Old English æppel “any kind of fruit
other than berries; nut; someone or
something cherished (ie. pupil or eyeball).”
2. Old English berie “berry.”
Apple は「くるみ、木の実」も含めて、
berry 以外のあらゆる実を指し、
古英語期にはすでに
apple of one’s eye --- 即ち、
「瞳、大切なもの (者 / 物)」の意味があった。
このフレーズは、以下のように用いる。
・She’s the apple of her father’s eye.
あの子は父親にとても大切にされている。
・He (God) found him (Jacob) in a desert land,
and the waste howling wilderness;
he led him about, he instructed him,
he kept him as the apple of his eye.
神はヤコブを荒涼とした原野たる砂漠に見つけて、
導き、教え、そして、大切に見守りました。
Apple が「瞳、目玉」を
指すこともあるということは、
Apple と Berry の違いは
大きさにあるのではなく、
硬さにあるのだろう。
Apple はたやすくつぶれない実、
Berry はたやすくつぶれる実。
古いノルド人の神話では、
(Old Norse)
世界樹ユグドラシルの緑の枝に
(Yggdrasil)
イズンと呼ばれる女神が、
(Iduna)
夫の歌の神ブラギと共に
(Bragi)
黄金の実を護りながら暮らしている。
その実を食べる北欧の神々は、
若々しさを保ち、不死である。
アンブロシアやネクトルで若さを保つ
オリュンポスの神々のように。
あるとき、ロキのいたずらな
(Loki)
誘いにのって、イズンは
アースガルズから出てしまい、
(Asgard)
鷲の姿をした巨人スィアチによって
(Thiazi)
巨人の国ヨトゥンヘイムにさらわれた。
(Jotunheim)
この事件のせいで、
アースの神々は若返りできなくなり、
(Aesir)
どんどん年を取っていった。
困った神々は、ロキを叱り飛ばして、
イズンを救い出すよう命令した。
ロキがはやぶさの姿になって
スィアチを挑発すると、鷲は
はやぶさを追いかけ回した。
ロキがアースガルズに入っていくのを
スィアチは追いかけていったが、
ロキが過ぎ去ると共に、炎が
ばっと上がり、スィアチの翼に燃え移った。
アース神たちは薪を積みあげて、
あらかじめ火をおこして
待ち構えていたのだった。
あわれスィアチは火だるまとなって
地面に落ち、アース神たちに殺された。
ロキはイズンをくるみに変えて、
アースガルズに連れ戻した。
イズンの実は不老不死の実
(Apple of perpetual youth)
ともいわれる。
古英語のゆびのみ (fingeræppla) は
「椰子の実」であり、
大地の実 (eorþæppla) は
「きゅうり」であった。
中英語の楽園の実 (appel of paradis) は
比喩的に「バナナ」を指すこともあった。。
今でも修飾語を伴うと「実」の意味になる。
西インド諸島で、ワニが食べるという実は、
alligator apple
オーストラリアの食用の実は、
kangaroo apple
卵の形の茄子は、
egg apple (= fruit of the egg-plant)
ジャマイカのワイルドマンゴーは、
monkey apple
ざくろ (pomegranate) は
punic apple
エデンの園でイブとアダムがかじった
楽園の実は
apple of paradise
ところによっては蕪も apple と表現する。
松かさ (pine cone) に似ている南国の実は
パイナップル (pineapple) と呼ばれている。
また、悪魔の実 (devil’s apple) といえば、概ね、
マンドレーク (mandrake) のことである。
love apple --- 「愛の実」は、トマト。
トマトは、十六世紀のヨーロッパでは、
媚薬になると信じられていた。
ちなみに
仏語は --- pomme d'amour
独語は --- Liebesapfel
またトマトはかつて「黄金の実」
golden apple
と呼ばれていたが、この名付け方は
イタリア語やロシア語と関係がある。
(ロシア語の語源はイタリア語)
Italian pomodoro 「黄金の実 = トマト」
Russian помидор (pomidor)
Apple に意味上対応するラテン語は
pōmus
このラテン語はフランス語 pomme の
語源で「りんご、実」を指す。
仏語で土の実 / 大地の林檎
(pomme de terre) は「じゃがいも」のこと。
pomum は印欧語ではないが、
ローマの果実や木の実の女神ポモナは親戚語。
・Pomona is the Roman goddess of fruits and nuts.
ラテン語にはまた fructus (→English fruit) もある。
フルーツはもともと
「(生ったことの) 喜び、収穫」
の意味であった。
Apple に意味上対応するギリシャ語は
µῆλον
現代英語の melon は
「甘みのある瓜、メロン、西瓜」を指すが、
古典ギリシャ語では、もっと様々なものを指す。
ギリシャをはじめ、ケルト諸国や
中央アジアの国々では、
龍が実 (ギリシャの場合、 µῆλον ) を
守っていた。(See dragon)
Apple は、現代英語の一般的な用法では、
「りんご (の実/果肉/木)」を指す。
・An apple a day keeps the doctor away.
・Apples don’t fall too far from the tree. You
are like your parents.
・Children love an apple more than gold.
・This tree brings forth sour apples.
・Your argument is as like as an apple is like an oyster.
(William Fulke)
・Fresh apples float because 25% of their
volume is air.
・Each person considers his fart sweeter
than an apple.
・Let's face it. English is a crazy language.
There is no egg in eggplant nor ham in
hamburger; Neither apple nor pine in
pineapple.
・Most of our best apples are supposed
to have been introduced into Britain
by a fruiterer of Henry the Eighth.
・apple pie.
・His friend came round
with a four-pound apple strudel.
・apple brandy.
・apple cider.
・apple orchard.
・apple gathering.
・apple bobbing - a game to try and catch apples
in the mouth while they float in the bucket of water.
・apple vender.
・apple woman: who keeps a stall for selling apples,
・We did everything together, schoolwork,
tree-climbing, apple-stealing, and all kinds
of mischief-making.
・She borrowed the apple-scented shampoo
for her shower.
・Fragrant apple flowers.
・And now the flower, and deadly fruit will come
With *apple-time in autumn.
(Swinburne)
日本語のりんごは、古くは、
りんこう、りんき、りんきん
など呼ばれていた。語尾の -ご は、
いちごの -ごと同じで、果物につけた接尾辞。
りんご が「りんごの木」を
指すこともあるように、英語でも
apple tree を単に apple とはしょることは多い。
十七世紀のベイコンは、
・Oaks and beeches last longer
than apples and pears.
樫や橅は林檎の木や梨の木よりも
長持ちする。
と書き残している。
丸っこいものや赤いものを親しみをこめて
apple と形容することもある。
・a pretty apple-cheeked girl.
・a plump, rosy-cheeked, apple-faced young woman.
・That apple-shaped Head
which its hair binds close into a ball.
・a little apple-headed dog.
英王室の礼装に用いる宝珠は
黄金の林檎と呼ばれている。
(The orb of the English Regalia is called
the golden apple.)
また、腐ったりんごは比喩で、
中英語期からあり、「わるい人」を指す。
シェイクスピアもこのフレーズは用いている。
・A goodly apple rotten at the heart.
(Merchant of Venice, 1.3)
芯の腐った見栄えばかり良いりんご。
一人でもわるい人がいると、
周囲の人はみなわるくなる、という。
・A rotten apple can spoil the whole barrel.
腐ったりんごが一つあると、
樽全体が駄目になる。
コックニーの押韻俗語では、
Apples and pears は stairs、即ち、
「階段」のこと。略して、apples
apples and rice ( or apples and spice ) は
nice の押韻俗語であったが、
オーストラリアやニュージーラントでは、
うしろの方をはしょって、
apples だけで nice の意味になった。
(この俗語は everything is の代わりに
she’s を使うこともある)
・She’ll be right, mate. She’s apples.
(うまくいくって。万事うまくいく。)
アフメッド王子のりんごは万能薬のこと。
(Prince Ahmed’s apple)
アラビアンナイトから。
動詞 apple は滅多に使われないが、
「実る、(実が) なる、(蕪などが) 膨らむ」こと。
または、「りんごをもいで集める」こと。
apple
[Old English æppel “edible, swollen-but-firm part of any plant; nut (compare berry); something or someone cherished.” The most frequently used sense in Present-Day English is “any kind of the fruit of a tree belonging to the genus Malus in the rose family, cultivated in countless varieties all over the two template zones.
The home of the apple is Central Asia, but the origin of the word apple is uncertain. Cognates, however, are found in other languages of Germanic, Baltic, Slavic, & Celtic branches in the Indo-European family..]
GERMANIC COGNATES
German Apfel
Dutch appel
Danish æble
Norwegian eple
Swedish äpple
Icelandic epli
BALTIC COGNATES
Lithuanian obuolys
Latvian ābols
SLAVIC COGNATES
Russian яблоко
Polish яблоко
Czech jablko
Serbian јабука
Slovak jablko
Slovenian jabolko
Croatian jabuka
CELTIC COGNATES
Irish úll
Welsh afal
東洋の外来語
日本語 アップル
朝鮮語 애플
➡️apple of discord
➡️apple of Sodom
➡️apple polisher