ab ovo usque ad mala
--- Latin idiom
word-for-word translation
from egg through to apples.
general translation
from the beginning to the end,
逐語的邦訳
卵から林檎まで。
(はじめから終わりまで。)
ラテン語の慣用句
古代ローマの食事のコースが、卵からはじまり林檎に終わっていたため、このような言い回しが出来た。初めに記したのはホラティウス (Horace, 65-8 BC)。ホラティウスは更にトロイアの戦争 (Trojan War) もレーダー (Leda) の「卵」からはじまったとしている。レーダーから生まれたのはヘレネー (Helen) である。戦争はトロイア (Troy) の王子パリス (Paris) がスパルテー (Sparta) 王メネラーオス (Menelaus) の王妃で絶世の美女であったヘレネーに横恋慕してさらったのがきっかけで勃発する。
ラテン語 ovo の主格形は ovum であり、「卵」のほか「卵子」を指し、その意味は英語 ovum に継承されている。
ab ovo 「発端から」は古雅な英文ではそのまま用いられる。英語の初出は十六世紀で、 OED はフィリップ・シドニー卿 (SIr Philip Sydney) の文を採録している。
If [the dramatic poets] wil represent an history, they must not (as Horace saith) beginne Ab ouo: but they must come to the principall poynt of that one action.
劇詩人が歴史を描こうとするならば、(ホラティウスが述べているように) 発端から始めることはないが、しかし、必ず一連の出来事の原点には戻らねばならない。
ラテン語 ab は接頭辞としては英単語によく見出せるものである。(→of)
美の審判に任命されたパリスのもとには、選ばれる側の三美神ヘーラー (Hera)、アテネー (Athena)、アプロディーテー (Aphrodite) からそれぞれ賄賂が届いたが、パリスは権力 (ヘーラー ) も戦略 (アテネー) もいらないといって、恋愛 (アプロディーテー) を選んだ。そのため、パリスは望みのヘレネーと相思相愛となったが、その代わりトロイアは力も戦略も手にすることはできなかった。ギリシャ勢はオデュッセウス (Ulysses) の盟約の下 (言い出しっぺのオデュッセウスは参戦を最後まで拒んだという逸話ものこるが・・・)、メネラーオスのもとに集結して、ヘレネー奪還の狼煙を上げた。勝敗は戦う前から決していた。力 (ヘーラー) と戦略 (アテネー) はギリシャ勢をバックアップしたからである。
この神話は、実は、パリスが何故美の審判になったのかを書かなければ、卵から語ったことにはならないのだが、それはまた別の機会に。
補足
ホメーロス (Homer) のイオニア方言では、語尾は -e になる。対応するアティカ方言は、おおねむ -a である。ラテン語化したものは -a 化する傾向がある。英語では語尾 -a がのこることもあるが、消えることもある (例: Ionic: Ἑλένη - Latin: Helena - English: Helen)。
アプロディーテーはローマのウェヌス (Venus)、即ち、ヴィーナスに対応する。
→濫觴 (漢語の「はじまり」).]
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