十九世紀後半から二十世紀はじめに生きたマーク・トウェインが株を売買していたのか、していたとしたら、どのようにしていたのかなど知らないけれど、まぬけウィルソンの暦の十二の金言のうち、十月に載っているものは直接株式の売買に言及したものであり、その見解は遠回しに、値幅取りの投機は避けよ、といっていて、その点でヴァリュー投資家のテンプルトンやバフェット (Warren Buffett, b.1930) の見解と同じである。
さて、ウィルソンの暦にはポートフォリオ構築に応用できる金言もある。二月の「卵は一つの籠に入れて、よく見張れ」というものである。この見解をテンプルトンとバフェットの投資哲学に照らし合わせると、両者の意見は一致していない。テンプルトンは分散を推奨している。というのも、どんなに注意しても未来は予測不能だからである。対してバフェットロジー (バフェットの投資哲学 = Buffettology) は、企業を二・三社理解するだけでも至難の業なのに、闇雲に分散してリスクを軽減していると思い込むのはまちがいだといっている。バフェトロジーは、この点では、ケインズ (John Maynard Keynes, 1883 - 1946) の投資哲学を継承しているのかもしれない。
ウィルソンの暦の五月には、意見の相違で競馬が成り立つ、とある。株に値段が付くのも人々の意見に相違があるからである。ある会社の株価が千円だとすれば、千円で買った人と千円で売った人がいて、売買が成立したことを示すが、買った人は千円なら割安だと思ったから買ったのであり、売った人は千円では割高だと思ったから売ったのである。
文人で株というと、永井荷風と北杜夫の名前がとっさに浮かぶ。林芙美子は株屋の事務員をした経験がある。
→Pudd'nhead Wilson Calendar→噂で買って結果で売る (テンプルトンに言及)
→旅を住処とした女 (林芙美子に言及)
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