Tuesday, August 02, 2011

shadow banking system

shadow banking system

--- Word DNA ---------------------------------------
2007 "financial system constituted by nonbank institutions, hedge funds, SIVs, SPCs, etc. which works in mysterious ways, avoiding rules & regulations." Also called the shadow financial system. Contrast with the traditional banking system.

ETYMOLOGY
Coined by Paul McCulley of PIMCO (Pacific Investment Management Company.) He defined the term as "the whole alphabet soup of levered up non-bank investment conduits, vehicles, and structures."
------------------------------------ 言葉の遺伝子 ---

伝統的銀行制度 (traditional banking system) と呼ばれている普通の銀行業務は、集めた預金を原資にして貸し出して稼ぐ制度である。

それに対して、それ以外の資金の調達・運用方法を編み出した金融機関が構成している制度を影の銀行 (金融) 制度と呼ぶ。造語したのは投資顧問会社 PIMCO のポール・マッカリーで、二〇〇七年のことであった。彼による定義は「レバレッジで持ち上げられたノンバンク系の投資仲介業者、投資媒体と投資集団からなる完全なごった煮」である。影の銀行制度は一九七〇年代の MMF (Money Market Funds) が起源であるという。MMFは銀行と違って規制を受けないが、銀行口座と同等の役割を果たす。

一九八〇年代半ばのレーガノミクスの下に行われた金融自由化から、様々な形で影の銀行制度は発展してきたという。一九九八年にはヘッジファンドの LTCM (Long-Term Capital Management) が運用に失敗して破綻したが、集めた資金にレバレッジをかけて、規制も受けずに取引していたので、影の銀行の一つということができる。

LTCM で多くの金融業者が煮え湯を飲まされたにもかかわらず、二〇〇〇年頃からはじまったハウジングバブルと歩調を合わせて、影の銀行制度は急拡大していったのだという。

影の銀行が扱う証券の取引は店頭市場で行われ、SEC (Securities and Exchange Commission = 証券取引委員会) の監視は届かず、自己資本比率などの規制に縛れることもない。そして、リスクマネジメントと称するデリバティブ取引が発達していった。二〇〇八年のバブル崩壊以前は FRB (Federal Reserve Board = 連邦準備理事会) もその規模を把握していなかったのだという。(規模は二〇〇八年当時、十一兆ドルとも二十兆ドルともいわれていた。対する伝統的銀行の預金残高は十一兆ドルであった。)

サブプライム (subprime) のメカニズムは、債権を有する業者が債権を証券化して年金基金やヘッジファンドやオフショアファンド、保険会社やそのほかの投資家に売却し、取引させ、そうして得た資金を再び貸し付けの原資にするというものであった。ローン会社は仲介業者として利潤を上げることができた。アメリカの住宅金融公庫であるファニー・メイ (Fannie Mae) とフレディーマック (Freddie Mac) は大量の MBS (Morgage Backed Security = 不動産担保証券) を発行して資金を回転させていた。モ ーゲージ債は大きく R からはじまるものと C からはじまるものとの二つに分類されている。RMBS (Residential Mortgage-Backed Security = 住宅ローン債権担保証券) と CMBS (Commercial Mortgage-Backed Security = 商用不動産ローン担保証券) である。これらの証券は SPC (Special Purpose Company = 特別目的会社) と呼ばれる、 大手金融の下部機関を介して投資家に販売されていた。

ABS (Asset-Backed Security = 資産担保証券) は、キ ャッシュフローのある資産に貸し出されたローン (賃貸物 件や自動車ローン) を担保に発行される証券である。ABS は直接、または、CDO (Collateralized Debt Obligation = 債務担保証券) という形にまとめて、SPC が投資家に販売する。CDO はより多額の資金を集めるのに役立ったのだろう。

このように様々な金融商品が充実してくると、それを本体とはオフバランスの SIV (Structured Investment Vehicle = ストラクチャード・インベストメント・ヴィークル) と呼ばれる特殊な子会社で運用するようになる。たとえば、シティーグループの SIV はシティーの連結決算から切り離されているので、自己資本規制などの制約を受け ず、また、SIV側の資産に問題が生じてもシティーの帳簿 上の財務健全性は保たれるようになっている。 SIV は低利の短期資金を利用して長期の高利証券に投資し、利ざやを稼ぐ仕組みになっている。もちろん、一種の影の銀行である。

からくりはどうなっているのかわからないが、サブプラ関連証券は格付会社から高格付を得ていたから、リスクを嫌う年金基金のポートフォリオにも組み込まれていった。

金融機関はサブプライム層 (信用力の低い借り手 / No Income, No Job & Asset 「無収入、無職、無資産」で、頭文字を取り NINJA とも呼ばれる層も含む) まで手を広げてもなお証券化 (資金調達) をやめず、ホームエクイティーローン (住宅価格の値上がり分を担保にしたローン) を利用して信用創造に邁進した。
二〇〇四年には、 CDS (Credit Default Swap) 市場が頭角を現し、わずか数年で六十兆ドルの市場規模になるほどの人気を博した。CDSは一種の掛け捨て保険で、買い手は債権 (債券) が値下がりしたり、不良化しても、売り手 (保険の提供者) に保証してもらえるという仕組みになっている。保険料は信用度によって決まり、買い手と売り手の 思惑で変動する。しかし、CDSは実質的に契約に縛られ るものでもなかったから、爆発的に普及したともいわれて いる。要するに、CDO をはじるとして、担保のある債券はデフォルトしない安全資産ということを前提に、CDSは契約 (取引) されていたのである。

モノライン (monoline) と呼ばれる金融業者は、公債の元利金を保証する。償還時に額面金額が支払われる債券を保証する会社だから、サブプライム関連の債券も保証の対象にしていた。

二〇〇七年まで、バブルによって住宅価格は右肩上がりであったから、業者は当初、少数のローンの焦げ付きがあっても気にしなかった。支払いを滞らせた住民を追い出して住宅を競売にかければ採算は取れたからである。ところが、その事例が多くなって、競売にかけられる物件が多くなると、買い手はしだいにいなくなり、中古住宅価格は下落していった。ローンは支払われず、物件の担保価値もなくなると、住宅関連債券の値段も付かなくなった。二〇〇八年には影の銀行制度を利用した多くの金融機関が経営に行き詰まり、主導した証券会社の一つであるリーマン・ブラザーズ (Lehman Brothers) は公的支援を受けられずに破綻した。ファニー・メイやフレディーマックといった国策民間住宅金融公庫も二〇〇八年のバブル崩壊過程で経営が行き詰まり、最終的には上場廃止となって、政府の管理下に入った。

しかし、それで終わりではない。自動車大手の GM (General Motors) は企業年金が破綻して会社そのものの存続が不可能になっていった。保険大手の AIG (American International Group) は、特にCDSの部門の損失が激しく、立ち行かなくなり、ほぼ危篤の状態となった。政府は米国を代表する金融機関や大企業に次々に公的資金を注入する膨大な財政出動を余儀なくされた。小さい名もなき会社はばたばたと倒れていった。FRBは何度も金利を引き下げ、最終的にはゼロ金利にして、大規模な量的緩和 (QE = quantitative easing / 日本でも QE という略称を使うことがある) を二回実施した。オバマ政権は債務の法定枠の上限までお金を借りてバブルの尻ぬぐいをした。

グローバル時代にあっては、カネは国から国に飛んで 回るので、サブプライム危機は欧州各国を中心に世界中の経済を混乱に陥れた。金融立国を目指していたアイスランドは国が傾いた。世界中の株式市場の時価総額は半分以下まで下落した。BRICs の中ではロシアが深刻なダメージを受けた。EU圏は特にギリシャ、イタリア、スペイン、アイルランドに余波が及んだ。

バブルは消費と投資を活発にするが、それがはじけると、生産設備や在庫や雇用が過剰となって、生産・供給側の経営に重くのしかかってくる。かといって、バブルに乗らないと他の企業にマーケットシェアを奪われてしまう。資本主義の好景気・不景気のサイクルといってしまえばそれまでだが、影の銀行制度が大きくなりすぎて、アメリカでは FRBが全体像を把握しきれず、資産インフレをコントロールできなかったのだろう。

二十一世紀最初のバブルを演出した影の銀行制度は新自由主義と無縁ではなかった。株式市場なら、SEC が監視していて、不正を行う者を見つけると排除してくれるが、店頭市場では自己責任である。また、SIVなどの金融媒体は、規制を受けない代わりに、中央銀行とも繋がりをもてないので、ある意味、完全な自己責任の取引をしていたといえる。また、タックスヘイブンに本体を置いたオフショアファンドは、実際の仕事はアメリカでやっても、アメリカには納税しないのだから、無政府主義的な傾向を有しているといえる。

影の銀行はアメリカ連邦政府の台所を火の車にした主因であることは間違いない。米議会はここ数日間、与野党が法定債務残高上限値を引き上げるかどうかの議論をしていたが、その決議いかんによっては、デフォルトになるところであった。なんとか、デフォルトは避けられる見通しとなったが、ここ数年で米ドルの信用はがた落ちとなっている。

オバマ大統領は社会保障の充実を画策したが、経済混乱の収束に多額の公的資金を投入せざる得ない状態で就任した。共和党保守派は概ね富裕層であり、景気が悪いままでは身投げしなければならなかったような人たちもいたはずである。茶党 (tea party) は、そういった経緯はおかまいなしに、民主党はお金を使いすぎると主張している。性善説が本当ならば、小さな政府は実現するが、どうやらそれは夢物語であるらしい。

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