Tuesday, February 14, 2012

リカードVSマルサス

十九世紀の英国には、現代のTPP加盟に賛否両論がある日本と同様の論争があった。自由貿易を推進しようとしたのが、リカード(David Ricardo, 1772-1823) であり、対して穀物輸入の関税を維持すべしとしたのは、マルサス (Thomas Robert Malthus, 1766-1834) である。

リカードの主張はだいたい次のようなものであった。

関税をかけて外国産の穀物を排斥していると、不足分を補うため痩せた土地まで開墾しなくてはならなくなり、採算が合わなくても農作物の生産を拡大しなければならなくなる。また、農作物よりもより利潤が大きい非農業生産物への人材や土地などの配分が結果的に減り経済効率が悪くなる。銘々が得意分野に専念した方が効率が良い。保護貿易による国家全体の生産性の減少は、いうなれば、国富を失うことである、

 対する保護貿易論者マルサスは、人口が増加すれば、農地代なども高い価値となるから、安易に関税を外して海外の安価な穀物を買うことはしない方が良いといったことを主張した。

あまりにも単純にまとめすぎているかもしれないが、この論争は、要するに、産業革命でのし上がってきた工場資本家対旧態依存の地主の戦いであった。現代日本でも経団連はTPP参加賛成、農家は反対の立場をとっている。

英国は一八四六年に関税を設定している穀物条例を廃止した。

ヴィクトリア朝時代は産業革命の先行と自由貿易によって、大英帝国は絶頂期に達したけれども、勢いは長続きせず、十九世紀も末期になると、斜陽の状態になっていった。大量生産の工業化は欧州の大陸諸国や米国でも一般化し、英国の経済的な優位性は崩れていったのだ。それでも、「世界の工場」は過去の蓄財で「世界の銀行」になり、植民地や外国への投資分のリターンで潤い、有閑マダムや不労所得者が出現するなど、奢侈な生活を送る人々も大勢いたようである。

大英帝国がたそがれていったのは自由貿易のせいではないだろう。よその国々でも大規模機械工業化が起きて、英国に追いついたのが主因だと思う。



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