fruit
fruit は外来語フルーツの語源だが、
履歴を紐解くと、奥が深い。
印欧祖語 *bhrug- は
「得る、楽しむ、実、恵み」
を指し、ラテン語から仏語を通じて
英語になった。
大地 / 自然の恵み
(fruits of the earth / nature)
などといえば、植物が作り出す
食べ物全般を指し、日本語の
山の幸、海の幸
の幸に似ている。
ラテン語では
frui 動詞原型
「よろこぶ、楽しむ」
fructus 完了受動分詞
「よろこばれた、楽しまれた」
という関係で、
自然・畑・果樹園、労働・努力などから
生み出された「喜ばれるもの、
楽しまれるもの、得になるもの」
あるいは、性質・悪行から
「もたらされるもの」を指す。
農園などで生み出される (= 採れる)
「くだもの、果実、実」は限定義。
作物の中でも特に、種があって、
汁を含んだ甘い果肉を有するもの。
今日の英語ではこれが最頻出語義。
Fruits of the Australian Tropical Rainforest.
オーストラリアの熱帯雨林の果実。
Many fruits taste sweet.
ほとんどの種類のくだものはあまい。
Take your daily dose of fruit and veggies.
毎日必要量の果物と野菜を取れ。
Strawberries are the only fruits
whose seeds grow on the outside.
いちごはその外側に種をつける
唯一の果物である。
He could make 12 sorts of sauces and 20 of
fruit tartes,
彼は十二種類のソースと二十種類の
フルーツタルトを作ることができた。
Is a tomato a fruit or a vegetable?
トマトはフルーツか野菜か?
The berries, which is the fruit, are red.
その実は、くだものであり、赤い色をしている。
You'll need lots of apples to make your own
cider. It takes about 36 pieces of fruit to
make one gallon.
自前でりんご酒を作るとなると、たくさんの
りんごが必要になるでしょう。一ガロン作る
のに三十六個くらいです。
以下のような比喩もある。
Milk is the fruit of the breasts.
母乳は乳房の果実である。
fruit には「実」の意味もある。
Chocolate is made from the fruit of the cacao.
チュコレートはカカオの実からできている。
語義を細分化すると、たとえば、
fruit gum
フルーツガム
(fruit = fruit-flavored)
fruit bat
「くだものを食べるこうもり」
(fruit = fruit-eating)
fruit wife
「くだものを売る女性」
(fruit = fruit-vending)
fruit knife
くだものナイフ
(fruit = fruit-cutting)
Fruit-Mill: mill for grinding grapes for must
or apples for cider.
フルーツミル ぶどうをワイン用ジュースに、
りんごをりんご酒にするために潰すミル。
(fruit = fruit-grinding)
といった用法もある。
ローマ時代から果物は
食事の最後に食べるものだったから、
シェイクスピアは『ハムレット』で、
fruit を「デザート、あとのお楽しみ」の
意味で使っている。
My News shall be the fruit to that great Feast.
私の知らせがあの大宴会のデザートとなる。
fruit は聖書を通じて
ヘブライ語の影響を受け、
「人、子、子孫」の語義を獲得した。
例えば、「子宮の実」
fruit of the womb
といえば、
「胎児、こども、子孫、人」を指す。
シェイクスピアの『ヴェニスの商人』には
The weakest kind of fruit
Drops earliest to the ground.
一番弱い実が
最初に地面に落ちる」
の台詞が見える。
「簡単に騙される人」
「簡単に口説かれる女性」
といった意味は十九世紀から。
くだものが簡単に摘み取れるからか?
二十世紀の刑務所やアングラの俗語では
「変態、性的堕落者」の意味になり、
やがて「男性同性愛者、ホモ」になった。
植物の実は、人を喜ばせる農作物であり、
徐々にできるものであり、
自然の中や人の営みを指すときは、
「もたらされるもの、結果、成果」
を指すことになる。
No root no fruit.
根なしは実なし。
(原因なくば結果なし)
A sound tree bears good fruit.
An evil tree bears bad fruit.
The tree is known by its fruit.
健全な木には良き実がなる。
邪な木には悪しき実がなる。
木はその実でわかるのだ。
(聖書では、木は人、実はその言行)
fruits of human civilization.
人間文明の産物。
ところで、個人的な想像にすぎないが、
fr-c (印欧祖語 *bhr-g-) の音が、
漢字の「喜、楽、歓、幸」に対応したとすると、
動詞の
This tree fruits well.
この木はよく実を成らせる。
は「木がよろこんでいる」ことを
指すのかもしれない。つまり、
以下の図式が成立する。
木が大いに喜ぶ = 木がよく実を成らせる
fruit のゲルマン語族の同系語に
brook 「たえる、こらえる」がある。
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fruit
Middle English “vegetables, grain, or edible part of a plant; part of a plant that contains seed, especially one that has sweet flesh covered by its envelope,” via Old French, from Latin fructus “enjoyment, proceeds, profits, produce, income,” perfect passive participle of frui, “to enjoy, use or have the benefit of”; ultimately from Proto-Indo-European root *bhrug- “to enjoy; edible part of a plant that nature produces or farmers grow.”
The Germanic cognates are brook “to tolerate or allow” & Present-Day German brauchen “to use.”
The Italic cognates are fructose, fruity, fruiterer, fruiterian, fruitless, fruition, fructify, frugal, frugivorous. & frumentry.
The word fruit has some figurative senses:“benefit, reward, results.” Under the influence of the Biblical Hebrew, fruit means a “fetus, baby, child, offspring.”
In slang, a fruit is “one who can be easily deceived,
or a dupe.” This sense appeared in the late 19th century & is probably correlated with the sense of fruitcake “one who is out of mind, eccentric, or insane.” In the 20th century, fruit got some new underground or prison slang sense “sexual pervert,” which is probably the source of the sense “male homosexual.”
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forbidden fruit
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