これが橋本五郎の短編小説『地図にない街』のストーリーの真ん中部分である。この部分だけとれば、シェヘラザードが喜んで千夜一夜に組み込みそうなファンタジックなハッピーエンドの物語なのだが、『地図にない街』には頭と尻尾がついている。
寺内氏がすでに亡くなっていることは冒頭で語られる。そして、小説のおしまいには、その自殺の真相が語られる。作者は、一人の若者を手玉にとって望みのものを得た老人の心象風景については語っていない。
『地図にない街』は、光が当たるところがあれば、影もできるといったことを示している作品だと感じる。
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