Wednesday, March 09, 2011

About "life is a joke"

 このブログでもうひとつやりたいのは名言名句、引用句の蒐集です。これまでも、世間一般でことわざや格言として知られているものばかりではなく、個人的に感動したり、作者からのメッセージだと思われるものをメールマガジンにまとめて、マイペースながら配信してまいりました。メールマガジンの最初の配信は、実は自分でも忘れていましたが、PC上のハードディスクには、二〇〇〇年十月三十日と記録されておりますので、かれこれ十年以上、細々ではありますが、続けてきた活動です。もともと英単語がどのように使われているのか知りたくて集めていましたので、メールマガジンで配信したのは英文でした。タイトルは、

Life is a Joke


 こういうタイトルだと客観性は損なわれますが、無味乾燥な「名言名句集」だとか「ことわざ辞典」だとというより文学的にはなっているかもしれません。見方によって文学は学問の上をいくものです。学問は客観性を重視しますが、気晴らしになりません。文学は気晴らしになり、楽しいものであり、美しいものであり、そのほか様々な感情の赴くままに気ままにあちこち思いを馳せることのできる娯楽となります。

 今にして思うと ----- Life is a Mystery ----- と付けた方がよかったのかもしれませんが、発刊当初は真剣にするより滑稽なものにしたいという願望の方が強かったため ----- Life is a Joke ----- となってしまいました。しかし、最も真剣なものは最も滑稽だとも言いますから、人生は笑い話といえば、かえって真剣に取り組んでしまっていることになるのかもしれません。なんだか御託ばかし並べてしまいましたが、ことわざや名言の蒐集家の公開ノートとして、気楽に読んでもらえたら幸いです。

 キャッチコピーは


耳に木霊を、瞼の裏に覚え書きを


 「瞼の裏に覚え書きを」とは、アラブの、あるいは、翻訳されて西洋の文学となった『千夜一夜の書』に出てくるフレーズで、シェヘラザードの語る個々の話に 一区切りついたところで、たびたび使われている慣用句です。前半の「耳に木霊を」はそれをヒントに思いついて付け足したフレーズです。

 発刊当時は特に含蓄があって滑稽味を滲み出させているものや、冗句めいた文句を配信していました。たとえばソロー (Henry David Thoreau) の言葉 -----
Man has become tools of their tools.
人は人の道具の道具になってしまった。
 あるいは、トウェイン (Mark Twain) のユーモラスな古典の定義 -----
Classic: A book which people praise and don't read.
古典: 褒めるだけで誰も読まない本。
 また、トリビアを絡めたものも配信しまた。たとえば、アポロ十二号の船長チャールズ・コンラッド (Charles "Pete"  Conrad) の台詞 -----
Whoopee! Man, that may have been a small one for Neil, but that's a long one for me!
わ~い、ニールにとっては小さな一歩だったかもしれないが、わたしにとっては長~く待たされた一歩なんだ。
 この宇宙飛行士の発言は地球標準時 (= グリニッジ時間)で一九六九年十一月十九日十一時四十四分に月面に踏み出したときになされたものです。ニールとは勿論、アポロ十一号のニール・アームスト ロング (Neil Armstrong) のことであり、「ニールにとっては小さな一歩だったかもしれないが」という人類最初の月面着足者になれなかったことの悔し紛れの台詞は、アームストロング が人類初の月面歩行者になったときに、月面にはじめて足を着けた感想として発した、
That's one small step for a man, one giant leap for mankind
一人の人間にとっては小さな一歩、人類にとっては大いなる飛躍です。
 に対するあてこすり的なもので、ジョーク好きのアメリカ人らしい発言だと思って配信しました。ちなみに、アームストロングが月面に足を踏み入れたのは、地球標準時で一九六九年七月二十一日二時五十六分です。

 ほかには、サクシャ・フショウ氏 (Author Unknown) の引用句もかなり配信しました。
If life's a joke, you may as well make it a good one.
もし人生が一篇の笑い話なら、君にだっていいもんが作れるだろう。
The two most common things in the universe are hydrogen and stupidity.
この宇宙にあるありきたりの二つのものは水素と愚かさである。
Do you realize that America's revolution was prompted by English taxes,... which were many times LOWER than today's income tax rates?
アメリカの独立革命は英国の税制によって触発されたんだけど・・・ それって今の所得税率より何倍も低かったんだよね。
 今後ブログ上では、英文のみならず、様々な言語のことわざや名言名句、慣用句の類をあつめていく所存です。個人的な感想や戯れ文のようなエッセー、ことわざ同士の対立などはともかくして、語句の背景や、名句の生みの親や原典のごく簡単な紹介は、かつて読者の方からの要望もありましたので付記します。

 バードウォッチングの楽しみには森の散策も含まれるように、ワードウォッチングの楽しみには書物の散策が含まれます。そして、鳥が自然の中で遊ぶように、言葉は書物の中にとどまらず、人間の言語活動の中を自由に飛び回って遊びます。

 また、全体から点を抽出したのが名句やことわざです。ですから逆に、点から入って全体を見たくなることもあるでしょう。もしもこのブログが読者の皆様の読書や、朗読・歌・トークショー・落語などを聞く楽しみ、観劇や映画鑑賞の喜びをよりいっそう促せるようになれたら、嬉しく思います。

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このブログについて

 ここは blind bard と名乗る一人の言葉好きが綴っているブログです。あらゆる時代のすべての民族の言語に興味があり、可能なかぎり深く知りたいと思っています。英単語の語源をまとめたり使用例を集めて、その語義 (senses) や振る舞い方 (behavior) を探り、「英単語を主人公にした叙事詩を書く」 ことを念頭に『英語語源物語』なるものを企ててから、だいぶ月日が流れました。もっともこのタイトルで長年メールマガジンなるものを発行してきましたが、スタイルはまちまちで、納得できるものに仕上がってはいません。
 なぜ数ある言葉の中で英語の語源が中心なのかといいますと、第一に最もよく研究されていてその成果を拝借でき、そして、第二に使用者が全世界に分布している人類史上もっともポピュラーな言語だからです。日本語の語源学は、漢語や外来語の由来を調べたり、故事成語や慣用句の出典や成り立ちを論じたりするのが中心で、日本語 (大和言葉) 自体のルーツを探求することはあまり進んでおらず、定説もまだできていません。英語をはじめとする印欧諸語の研究は、グリムの法則に代表されるような精緻な音韻論を成立させ、音素の基本的語義まで探ろうとする極めてロマンチックなものなのです。印欧諸語は、大航海時代までには既にインドからポルトガルまでを支配していましたが、その後、新世界や太平洋の島々、オーストラリアやニュージーランド、アフリカ諸国へと進出していきました。印欧諸語を話す Indo-European はもっとも活動的で、もっとも好戦的で、もっとも生産的で、もっとも破壊的で、もっとも思慮深く、芸術とスポーツを楽しむ余裕を古くから勝ち取り、共和制や共産主義を創造して実践した諸民族です。もっとも迷信的であると同時に、もっとも科学的でもあるので、比較言語学も盛んに行われてきましたし、いまもマクロファミリーを探る研究が進んでいます。おそらくほかの民族 (群) に比べて、もっとも自由な思想を持つ者もいる一方で、もっとも差別的な気質の者がいるとさえ考えられます。そういった人々の話してきた (そして、いま現在話している) 言葉は、筆者にとって魅惑的なもので、興味をそそられるものなのです。(ほかの民族にもおもしろい点はあります。世界は多様だから良いのでしょう。)
 このブログを続けるにあたっては、学術的に正確で、なおかつ、歴史の渦の中に埋もれつつあるトリビアをちりばめ、エンターテイメント性を織り込んだスタイルの読み物にしたいと思っています。

Manus manum lavat

Manus manum lavat
--- Latin Proverb

word-for-word translation
hand, hand, washes.
(Hand washes hand.)

free translation
Hands wash each other.
People (should) help each other.

逐語的邦訳
手は手を洗う。
手が手を洗うように互いに助け合うべし。

片手では手はうまく洗えない。両手があるから洗える。意訳すると、「互いに助け合うべし」となる。南アフリカのズールー族には同様のことわざがあり、ズールー語で Izandla ziyagezama 「手は互いを洗い合う」という。ただ、これがズールー族のオリジナルなのか、白人から聞いたものかは確認できない。

ラテン語のことわざはローマの詩人セネカ (Seneca: 1 BC? - 65 AD) の言葉。思想的にはストア学派に傾倒していたらしいが、冷酷な性格で悪名高いネロ (Nero) の教師であった。教える大人が子供の性格に影響を与えることを考えると、どのような人格の持ち主であったのか気になるところである。厳格すぎた可能性もあるし、思想的には放任主義であった可能性もある。ネロが皇帝に即位した後もブレインを務め、ネロによるネロの母親アグリッピナ (Agrippina) の暗殺計画が失敗に終わると、ネロはブレインであるセネカに相談した。セネカはローマの内戦を避ける為と称して襲撃計画を企てた。ネロが直接手を下したわけではないが、母親殺しとなって、もともと不安定だった精神状態はますます不安定になっていったらしい。セネカはそのあと、横領の嫌疑をかけられて政界から退き、研究と執筆に専念した。

しかしそんな日々は長くは続かず、ネロへの反逆の一派に属すると名指しされ、皇帝自らの命令によって、セネカは自殺した。

About "Life is a Joke"
Latin Index
manage (manus の血縁語)
体の部位に関わりのある言葉

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Nihil sub sole novum

word-for-word translation
nothing under the sun (that is) new.

general translation
There is nothing new under the sun.

逐語的邦訳
ものはなし、日の下に、新しき
(日の下に新しきものなし)

『伝道の書 (Ecclesiastes)』一章九節にある語句のラテン語版。『伝道の書』全体を要約すれば、「人生は虚しいが、神様を信じることによって救われる」と説いている。

Latin Index

ラテン語関連の書

Tuesday, March 08, 2011

Tempus edax rerum

Tempus edax rerum.
--- Ovid, Metamorphoses

word-for-word translation
Time, (the) devourer of (all) things.

general translation
Time is the devourer of all things.

逐語的邦訳
時、事物を貪るもの。

代ローマの詩人オウィディウス (E. Ovid / L. Ovidius, 43 BC - 17 AD) の『変身物語 (Metamorphoses)」にある語句。この書は十五巻から成り、西暦紀元後八年に完成したが、世界の創世期からカエサルが昇天して神になるまでの数々の変身物語を描いていて、表題のフレーズは最終巻に載っている。

時間はなんでも食い尽くす」 言い換えれば、「時間が経てばすべて失われる」

古代ローマの都市は廃墟となり、やがて朽ち果てる。地球の地殻はマントルの対流によって動いているというから、何千万年か何億年か知らないけれども、いずれ長靴型のイタリア半島も日本列島も海に沈むのかもしれない。未来のことは誰にも正確に予測できないので、ダーウィンが言うように人類も進化 (変身?) するのかどうかわからないが、数千万年も経つといわゆるホモサピエンスなどはいなくなるのだろう。太陽もあと数十億年で使える水素を使い切って、地球を飲み込むほどまでに膨張してなくなってしまうのだという。宇宙の歴史に終わりがあるのかどうか知らないが、はじまりがあるなら、終わりもあるだろう。時間はすべてを食い尽くす。これは普遍的なことを述べたうまい表現だ。

Latin Index
Nullis amor medicabilis herbis (by Ovid)
ピュグマリオーン (オウィディウスが採録した神話)

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オウィディウス
変身物語
チャールズ・ダーウィン

Wednesday, March 02, 2011

『英語語源物語』について

 言葉の歴史を綴る叙事詩
英単語が主人公の物語

 『英語語源物語』は、だいたいこのタイトルどおり、英語の語源を自分なりに整理してみようと試みているメールマガジンです。使用例から語義を探ったり、語義の変遷を推測したりすることをやっています。只今、下記のまぐまぐメルマめろんぱんの各サービスを利用して配信しています。出来れば、旬報ぐらいにはしたいと思っておりますが、ここ数年は半年に一回程度の配信ペースとなってしまっています。

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