Tuesday, October 17, 2006

centum languages

centum languages

 印欧語族二大語群の一つ。祖語の口蓋音 (k, kw) を保持している語群を「ケントゥム語群」という。ゲルマン語派、イタリック語派、ヘレニック語派、ケルト語派、アナトリア語派、トカラ語派はこのグループに属する。これらの仲間のうち、ゲルマンの無声口蓋対応音は h音と hw音 (英語の綴り方では wh-) である。例えば、ラテン語 centum「百、沢山」は、印欧祖語 *kmtom に遡るが、対応するゲルマン語派直系の英単語 hundred 「百」も、やはり、印欧祖語 *kmtom に遡る。また、印欧祖語 *kwo- は英単語 who; when; what などの先祖である。このグループの中で、地理的に遠く隔たって東へと移動していったのはトカラ語派である。
 ケントゥム言語群に対して、口蓋音が歯擦音 (s, sh) 化した語群をサテム語群 (satem languages) という。satem はアヴェスタ語で「百」の意であり、印欧祖語 *kmtom に遡る。「百」とも関係のある「十」について、両語群の相違点をみてみよう。

 PIE *dekm- "ten"

 (centum languages)
 Latin decem
 Greek deka
 Old Irish deich
 Welsh deg
 Tocharian A s(h)äk
 Tocharian B s(h)ak
 Gothic taihun
 German zehn
 English ten
 (英語の ten は、おそらく、h の消滅で成立している。
 ゲルマン語派には、他にもその例がある。
 現代ドイツ語は -h- を綴るが、口蓋音に発音しない)

 (satem languages)
 Sanskrit das(h)a
 Avestan dasa
 Armenian tasm
 Old Church Slavic deseti
 Lithuanian desimt

 ヒッタイト語 (アナトリア語派) とトカラ語は、祖語に最も近いと推定されているから、まずケントゥム側の人々が、印欧祖語を話していた民族 (Proto-Indo-European) のいた黒海北岸のステップ地帯から散発的に離脱していき、その一派は黒海南部のトルコに住み着き、別の一派は東方に流れて、「トカラ人」となったのであろう。屈折活用がシンプルなヒッタイト語は、文法的には梵語 (サテム語群 / インド・イラン語派) やギリシャ語やラテン語に近いトカラ語とは別種であるから、トルコまで一緒だった可能性はない、と想定できる。その後 (?) の祖語からの離脱組は、主に西方に流れていった (おそらく、ブリテン島ににいち早く到達した印欧族はケルト人であろう)。その離脱の後 (?)、地理的に離れ、時間が経過すると、残った人々の間にサタム語化が起きたのであろう。「サテム化」はケントゥム語群内の借用でも起きていて、例えば、ラテン語 centum から来た英単語 cent の c は s である。
 比較言語学史上、この分類法が成立したのは一九〇一年で、英語でも、この用語における centum の c は s化せず、ラテン語のようにk音で発音する。

centum languages
[20th c. This technical term of the comparative Indo-European linguistics was coined, 1901. The velars (k, kw) of the proto-language survive in this group. Centum is from Latin "hundred". Proto-Indo-European *kmtom- "hundred". See also satem language.]

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