かつては裕福であったが、今は落ちぶれてしまった家のあるじである王成が、あるとき簪を拾う。持ち主は老婆で、亡き王成の祖父の連れ合いであった。老婆は狐仙であった。聞くところによると、百年前に王成の祖父と恋仲になったが、祖父が亡くなったあと、身を隠したとのことであった。狐仙は王成の家の貧しさを見て、嘆き、商売の元手にと金をくれた。
王成は葛布を買って都に商いに出たが、王成が都に着く前に値が急騰し、やっと到着して商いをしようとしたときには、値は暴落してしまっていた。宿の主人は葛布を売り払って、新たな商売をしてはどうかとアドバイスした。王成は落胆しながらもその通りにした。ところがその金は寝ている間に何者かに盗られてしまう。
誰かか役所に訴えて宿の主人に弁償してもらうようにすすめるが、王成は運命だと諦める。宿の主人はそのさまを忍びなく思って、いくらの金を貸してやる。
鶉の闘いを目撃すると、挽回のチャンスと心躍り、王成は鶉を買い込んだ。ところが、日に日に鶉がどんどん死んでいく。毎日毎日死んでいくから、真綿で首を絞められるような思いであった。しまいにはとうとう一羽だけとなってしまう。
こいつはすごい鶉に違いない、ほかのを皆殺しにしたんだから、と宿の主人は慰める。宿の主人は親切な人で、いろいろとアドバイスしたり、宿賃や食事代をいくらでも待っていてくれる人であった。
この鶉は本当に強かった。連戦連勝で勝ち続けた。暮らしが立つようになった頃、丁度、上元節に鶉好きの親王が鶉飼いをしている庶民を招いて、宮殿の中で闘わせるのである。
宿の主人は大もうけのチャンスだといったが、王成には不安もあった。
結果だけ書けば、王成の鶉は親王のどの鶉よりも強く、親王が王成の鶉を欲しがり、値段の交渉の末、大金を手に入れ、ハッピーエンドとなる。
これは間接的ながら、狐が人に富をもたらす話である。狐が出て来る民話は日本にも沢山あるだろう。西洋のイソップ物語では、狐はずる賢いやつであったり、どこか間抜けなやつであったりする。
→首を取り換える中国の怪談 (『聊斎志異』)
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