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[Latin, from Greek Ἀχιλεύς. Perhaps from Pre-Greek language. Ultimately, origin unknown. Achilles is the son of Peleus and Thetis in Greek methology. When he is a baby, his mother Thetis dips him into the magical water of the Styx by holding his heel to make him immortal. And then he becomes immortal, but his heel is still vulnerable. During the Trajan War, Trojan Prince Paris shoots an arrow at the weak spot of Achilles and kills one of the greatest heroes on the Greek side. 1693, Dutch anatomist Philip Verheyen coined chorda Achillis in Modern Latin. It is known that he dissected his own amputated leg. The term changed into English Achilles' sinew. Another Modern Latin term tendo Achillis was coined by German surgeon Heister and it became Achilles' tendon in English, 1879. The figurative use of Achilles' heel was first recorded in 1864. A plant name of Achillea is derived from Greek Akhilleios "of Achilles" with the feminine suffix -a. When Telephus is wounded in the Trojan War, Achilles uses it to cure.]
[Latin, from Greek Ἀχιλεύς. Perhaps from Pre-Greek language. Ultimately, origin unknown. Achilles is the son of Peleus and Thetis in Greek methology. When he is a baby, his mother Thetis dips him into the magical water of the Styx by holding his heel to make him immortal. And then he becomes immortal, but his heel is still vulnerable. During the Trajan War, Trojan Prince Paris shoots an arrow at the weak spot of Achilles and kills one of the greatest heroes on the Greek side. 1693, Dutch anatomist Philip Verheyen coined chorda Achillis in Modern Latin. It is known that he dissected his own amputated leg. The term changed into English Achilles' sinew. Another Modern Latin term tendo Achillis was coined by German surgeon Heister and it became Achilles' tendon in English, 1879. The figurative use of Achilles' heel was first recorded in 1864. A plant name of Achillea is derived from Greek Akhilleios "of Achilles" with the feminine suffix -a. When Telephus is wounded in the Trojan War, Achilles uses it to cure.]
----------------------------------------------------- 言葉の遺伝子 ---
ギリシャ神話の英雄アキレス (または、アキレウス) 。父はテッサリア (Tessaly) のミュルミドン (Myrmidon) の王ペレウス (Peleus)、母は海の精霊テティス (Thetis)。アキレスの名について、Brewers は a- をギリシャ 語連結接頭辞、kheilos は「唇」で、「美しき唇をもっている (with beautiful lips)」であるといっている。しかし、アト・ド・フリース (Ad de Vries) は「唇がない」の意味であるとし、アキレスが授乳によらず、半身半馬ケンタウロス (Centaur) のケイロン (Chiron, Cheiron) とフェニックス (Phoenix) に育てられた為の命名だと説明している。ケイロンはアキレスに癒しの術を教え、フェニックスは戦術とレトリックを教えた。「唇がない」が正しいとすると、 語頭の a- は amorphous 「無定型の、非結晶の」の a- と同様に、ギリシャ語の否定接頭辞ということになり、アキレスの名は "lip-less" ということになる。(amorphous は a- "not" と morphos "form" と、形容詞を形成する接尾辞 -ous から成り、"shapeless, formless" と解釈できる。なお、この a- は母音の前では an- であり、anarchy [an- "without" & anarchos "ruler"] などの語となって現代英語にのこっている)
ほかにもアキレスの語源は諸 説あり、語源不詳とするのが無難だろう。ギリシャ語以前に起源があるとする と、今の我々には想像もつかない意味が隠されていることになる。
母親のテティスは赤子であったアキレスを不死身にするために黄泉の川ス テュックス (Styx) に浸したが、その際かかとをもっていたので、そこにだけ水がつかずにアキレスの弱点となってしまう。このエピソードは最も有名だが、異説もある。たとえば、テティスは赤ん坊のアキレスを不死身にする為に夜ごと火に投げ入 れ、昼のうちに神々の食べ物であるアンブロシア (ambrosia) を塗って治療し、少しずつ鍛えていったという話である。ある晩、火の中でもがいている赤ん坊を見て父親のペレウスはびっくりし、妻を責め立てた。テティス は家を出て行った。妻に家を出て行かれて困ったペレウスは赤ん坊の養育をケイロンに委託した。
不死のバリオス (Balius) とクサントス (Xanthus) はアキレスの愛馬である。二頭の馬はもともとポセイドン (Poseidon, or Neptune) からペレウスへの結婚の祝いの品であった。バリオスはぶちのある模様だったのだろう。その名は「まだらのある (spotted )」である。もう一頭のクサントスは「金髪 (blonde)」のことである。アキレスは、トロイア戦争 (Trojan War) において、アキレスなくしてギリシャ勢に勝利 なしと予言されていたが、テティスの受けた予言では戦死することになっていたので、母親は息子に女装させ、スキュロス島 (Scyros) に隠す。アキレスはその地で王リュコメデス (Lycomedes) の娘の一人デイダミア (Deidamia) と恋に落ちて結婚する。二人の間にできた子はピュロス (Pyrrhus) --- 別名ネオプトレモス (Neoptolemus) --- である。その後、父親はオデュッセウス (Odysseus, or Ulysses) によって女装していることを暴かれ、トロイアの戦場に向かうことになる。ホメロス (Homer) の『イリアス (Iliad) 』はトロイア戦争における総大将アガメムノン (Agamemnon) とアキレスの確執を描いた叙事詩である。その仲違いの原因も、トロイア戦争の原因と同様に、女性の取り合いであった。アガメムノンはアキレスが捕虜にした ブリセイス (Briseis) --- 別名ヒッポダミア (Hippodamia) / ブリセイスは父親の名ブリセウス (Briseus) から付けられたもの --- に横恋慕して奪い取る。アキレスは憤慨して戦列を離れるが、その間に、親友のパトロクロス (Patroclus) が敵であるトロイア (Troy) の王子ヘクトル (Hector) によって倒されて戦死してしまう。その知らせを聞くとアキレスは深く哀しみ復讐を誓って戦場に復帰する。アキレスはヘクトルを一騎打ちで破るが、そのあ と、この戦争の原因を作った王子パリス (Paris) の放った毒矢を踵に受けて戦死した。(この戦争はテティスとペレウスの結婚式に招待されなかった不和の女神エリス (Eris) が黄金の不和の林檎 (apple of discord) を結婚式の会場に投げ入れたことが原因である。林檎には「最も美しい方へ」と記されてあったので、三人の女神達が争うこととなった。主神ゼウスは一計を案 じ美の審判員に人間の中では一番の美男子である羊飼いのパリスを指名した。パリスはトロイアに破滅をもたらすと予言されていたので、トロイアの王室によって田舎に棄てられていたのであった。知将の女神アテナ (Athena, or Minerva) は勝利するための知恵を、へラ (Hera, or Juno) は世界を支配する権力を与えるとパリスに約束したが、パリスが選んだのは、最も美しい人間の女性ヘレナ (Helen) を与えると約束したアプロディテ (Aphrodite, or Venus)であった。ところがヘレナには婚約者、スパルタ (Sparta) 王メネラオス (Menelaus) がいたのである。メネラオスに災いがあれば、もともとヘレナの求婚者だったギリシャの諸王たちは一 致団結して、その不幸を払いのけるという盟約が結ばれていたので、ギリシャとトロイアの間に戦争が勃発した)
ホメロスはアキレスに幾つかの輝かしい形容 辞を与えたが、その中の一つに「俊足の (podas okus, or swift-footed)」がある。しかし、古代の数学者エレア派のゼノン (Zeno of Elea, c490 BC-c430 BC) によれば、ハンデを付けられて後方スタートとなれば、アキレスといえども、前方を行く、足の早さが十分の一ののろい亀 (tortoise) には追いつけないのだという。なぜなら、アキレスが亀のいる地点に行くまでには時間を要するが、その同じ時間で亀も前に進むからである。そして更に、その 地点からまた亀のいる地点まで行くには時間がかかるが 、時間があれば、亀も前に進む。時間が進めば進むほど、両者の距離は縮まるが、決してアキレスは追いつけない。逆からいえば、無限の時間を費やしてもアキ レスは前方の亀においつけないということになる。ゼノンは他にも「飛んでい る矢は止まっている」などの運動 (motion) に関する逆説を提示したが、パルメニデス (Parmenides, 5th century BC) の哲学を援護するためだったといわれている。
アキレス は「英雄」の代名詞であり、西洋史には幾人ものアキレスがいる。「アキレス二世、ローマのアキレス (the Second Achilles, or Achilles of Rome)」は、ローマの執政官シキニウス・デンタトゥス (Sicinius Dentatus, d. c450 BC) のことであり、「ドイツのアキレス (Achilles of Germany)」はブランデンブルグの選帝侯アルバート三世 (Albert III, 1414-86) であり、更に、「イングランドのアキレス (Achilles of England)」はウェリントン公 (Duke of Wellington, 1769-1852) である。また、架空の英雄も アキレスといい、「北の英雄 (Achilles of the North)」は、古英語最古の叙事詩の主人公ベーオウルフ (Beowulf) であり、「西のアキレス」は、サラセン人をきりきり舞いにしたフランス歌謡に登場する十二勇士 (12 Paladins) の最強の戦士ローランド (Roland) のことである。
十 七世紀末、オランダ人解剖医ヴェルヘイェンは自らの切断された足を解剖して、 踵の上部の腱を近代ラテン語で chorda Achillis と命名し、英国人はこれを Achilles' sinew と英訳した。現代英語標準の Achilles' tendon は十九世紀に出現したもので、近代ラテン語 tendo Achillis から。このラテン名はドイツ人外科医ハイスター (Heister) が、傷つきやすいところであることを加味して造語したものである。(アポスト ロフィーはつかないこともあるし、Achilles's のように後ろに s を付け足す書き方もある。後述の Achilles' heel も同じ)
The function of the Achilles tendon is to raise the heel.アキレス腱の役割はかかとを持ち上げることである。
He recounted his successful surgery on a ruptured Achilles tendon.
彼は執刀してうまくいったアキレス腱断絶手術について詳述した。
「アキレスのかかと (Achilles' heel)」は比喩で「致命的な弱点、急所 (critical weak point)」のことである。He recounted his successful surgery on a ruptured Achilles tendon.
彼は執刀してうまくいったアキレス腱断絶手術について詳述した。
The fortress has no Achilles heel.
その要塞は鉄壁である。
Yes, that is one of his Achilles heels.
そう、それが彼の弱点の一つ。
Every team has an Achilles heel.どのチームにも弱点はある。
Our strength has become our Achilles' heel.我々の強みが我々の弱点となったのである。
セイヨウノコギリソウ、ヤ ロー (yarrow) の類はキク科の多年草で、英語では Achillea (-a は女性形指小辞) というが、トロイア戦争の際、アキレスが負傷したテレポス (Telephus) をこの草で治療したことからの命名である。その要塞は鉄壁である。
Yes, that is one of his Achilles heels.
そう、それが彼の弱点の一つ。
Every team has an Achilles heel.どのチームにも弱点はある。
Our strength has become our Achilles' heel.我々の強みが我々の弱点となったのである。
→feet of clay