Proto Indo-European
*kailo- "whole, uninjured, of good omen"
The ancestor of:
1) heal, hale "sound or healthy," whole, holy, holiday, hallow, Halloween.
2) hail "Greetings! Welcome!; to salute", wassail. (from Old Norse)
(Both 1 & 2, all the words are from Proto-Germanic *hailaz.)
ETYMOLOGY
[Middle English helen, from Old English haelan "make whole, sound, or well," from Proto-Germanic *hailjan, from *hailaz "whole, healthy, sound," also the source of Old English hal "healthy, whole." Many Germanic cognates are found: German heilen (Old High German heilan, akin to heil "health, happiness, good luck"), Dutch heelen, Old Frisian hela, Old Saxon helian, Old Icelandic heila, & Gothic hailjan. Health is made of Old English adjective hal & the suffix -th (modern form; it denotes a state or quality, forming a noun from an adjective or a verb.) Healer whose original sense is "one who heals" appears a1200; later, gets a new sense "thing that heals; remedy." Healthy is first recorded in 1552 (the adjective-forming suffix -y means "having the quality of.") Healthful is made of health and -ful, the adjective-forming suffix having the same function of -y; first used in the Wycliffite Bible, c1384.]
* = reconstructed form
-------------------------------------------- 言葉の遺伝子 ---
印欧祖語は「完全な、傷ついていない、吉兆の」で、おそらく、戦闘後に無事であることを指していたのだろう。あるいは、五体満足に (死産や早産もなく) 無事に生まれてくることや、年を重ねても病気や怪我がない本来の肉体のまま「完全」でいられるということは「運がよい」ことだと考えていたのかもしでれない。何はともあれ、古代人に教えてもらうまでもなく、健全なれば、幸先は良いということである。この観念は、ゲルマン語派の人々に受け継がれ、広く h_l の音素で表現されるようになった。
古代から人々の願いであった健康、幸福、そして、幸運を、古高地ドイツ語では、heil の一語で表現していた。このヘイルは古ノルド語由来の英単語 hail (英語の原義は間投詞で「万歳! こんにちは! いらっしゃい! ようこそ! (Greetings! Welcome!)」) であり、ドイツ語の「ハイルヒトラー (Heil Hitler! = ヒトラー閣下万歳!)」の heil とも繋がっている。Hail Mary は Ave Maria のゲルマン語ヴァージョンであり、現代アメリカにおいて hail Mary pass といえば、アメリカンフットボールにおける、聖母マリアにすがる一か八かのパスを指す。
古ノルド語は更に英語に wassail を提供しているが、その原義は「達者に / 健やかに / お元気で (何よりです) (be healthy!) である。(古ノルド語 ves heill の ves はbe動詞過去の was と同系の命令法で、heill は healthy に相当)
現代英語の heal は「なおす、なおる、完全にする、完全になる、または、完全に戻す / 戻る (完治する / させる)、欠けているところがない本来の状態にする / なる」ことであり、具体的には、病気、怪我、精神的苦痛、わだかまり、確執、二者間の溝などを改善・修復する動作・作用を表現する動詞である。
Leave your drugs in the chemist's pot if you can heal the patient with food. --- Hippocrates
食事で患者を治療できるなら、薬剤師の鍋の中の薬は放っておきなさい。
How to heal your vision.
視力を回復させる方法。
Just as a broken leg takes two to six months to heal, broken emotions need time to heal themselves.
足の骨折が完治するまで二ヶ月から六ヶ月を要するように、傷ついた心が癒されるまでには時間がかかる。
Flowers that heal.
癒しの花束。
Words can hurt or help heal.
言葉は傷つけることもあるし、癒しの役に立つこともある。
His visit healed the rift between the two countries.
彼の訪問によって二国間の溝は修復された。
端的にいえば、to make or become whole を動詞 heal の定義とすることができる。(whole には「傷がない、健康な (uninjured, healthy, or sound)」の語義が現代でも保存されている)
He can make sick folk whole and fresh and sound.
彼は病気の人々を完治させ、活力を取りもどさせて、丈夫にすることができる。
heal と whole が現代においても意味の上で重なり合うのは、これら二語が共通のゲルマン祖語から派生した同語源の単語だからであり、古英語まで同形 (hal) だったからである。更に hale も、今日では主に年配者を形容するものであるが、ほぼ同義で、同源である。
a well-looking, hale, gentleman-like man, aged fifty-seven...
元気そうで矍鑠とした紳士っぽい五十七歳の男。
更に同じゲルマン祖語から誕生した言葉に holy がある。holy は原義的にいって、「(傷つけられたりせずに) 完全な (whole) = 冒されない (not able to be violated)」を原義としているのだろう。
hallow 「聖なるものとする、あがめる (to make holy or honor as holy)」も holy や heal と同系語で、名詞では「聖者 (holy person or saint)」を指し、Halloween の構成要素になっている。
Halloween は十月三十一日で、古いケルトの暦では一年の最終日、大晦日にあたり、元々は魑魅魍魎が跋扈する「魔法使いの夜 (night for witches)」であり、翌元日は「(全) 聖者の祭 (日) (Hallowmas, or Allhallowmas --- -mas は Christmas の -mas と同語)」であったが、キリスト教会は土着の風習を利用して、十一月一日を万聖節 (All Saints' Day) とした。Halloween (Hallowe'en)は一七四五年頃にスコットランドで成立した語形であるが、Allhallow-even 「万聖節前夜祭」の略語である。
「治療者、療法家」あるいは、「キリスト」を指す healer は古英語期後期に登場し、中英語期に「治療薬」といったモノを指す語義が発生した。今日の healer は一般的にいって「救世主」の意味では用いない。十四世紀に借入されたロマンス語系の Savior / Saviour が代用となっている、
health は「heal + -th」ととらえることもできるが、古英語期に形容詞 hal 「健全な、完全な (healthy, whole)」が既にあって、それに -th (古英語形: -tho, -thu, -th) が結びついて成立している。接尾辞 -th は状態・状況などを示すから、 health の原義は「健康 (state of being healthy)」である。(古英語 hal は hale や whole にも発展) 通例、人の肉体と精神の状態に用いるが、比喩的にモラルや経済、二者間の関係の健全性を指すこともある。
Financial Health of the Aerospace Industry.
航空宇宙産業の財務健全性。
乾杯の音頭 (例: To your health!) などの用法は、この単語が hail や wassail と同系であることを思い出させる。
healthy は一五五二年の初出で、-y は、この場合、状態を示す形容詞を形成する接尾辞である。「健康な」のほかに「健康に良い」の語義も同時に出現した。比喩的に人の肉体や精神以外にも用いるという点では名詞 health と同じ。
How healthy is the balance sheet?
バランスシートの健全度は?
healthful はウィクリフ版聖書に初出があり、healthy より年上であるが、healthy と二重語であるから、使用頻度が低い。このことは接尾辞 -y と接尾辞 -ful が同義であることを示すもので、両者には「〜の性質を有する / 満ちている (having the quality of; full of)」の定義が当てはまる。グーグルでのヒット数は以下のとおりである。(二〇〇八年十二月現在)
healthy: 175,000,000
healthful: 3,460,000
powerful はあっても powery はなく、bloody はあっても bloodfulがないように、-y と -ful はどちらか一方が名詞と結びついて形容詞を形成することがあっても、health のように両方 (healthful & healthy) に存続する例は他にないだろう。
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