Wednesday, December 19, 2007

kill

--- WORD DNA ---------------------------------------------------------
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*gwel- "to throw or reach"
This is the ancestor of:
1) kill, quell (of German origin)
2) ball (gethering for dancing), ballet, ballad; symbol, parabola, parable, parliament, parlor, problem, devil, metabolic (of Greek origin)

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[Middle English "to strike"; later, "to slay or put to death"; probably from Old English *cyllan, related to cwellan "to kill", closely related to quell. The noun came up in the 19th c. Killer is first recorded in the surname in the 13th c.]

* = reconstructed form
--------------------------------------------------------- 言葉の遺伝子 ---


 印欧祖語 *gwel-「なげる、とどく」から。これは勢いよく速く動いて何かにぶつかること、勢いよく動かしてぶつけることを示す語感であろう。従って、「ぶつ、たたく」がゲルマン語圏で発生し、「ころす」の意味が完成した。ゲルマン語派の同系語には「いじめる」、「傷めつける」、「拷問する」などを指す語が見つかっている。強く叩くことを指す用法はテニス用語として今も生き残っている。

Some can't hit a slow ball at all, others kill slow balls every time.
スローボールをまったく打てない人もいるが、その一方でスローボールを毎回見事に打ち返す人もいる。


 サッカー用語としてはボールを止めることであり、ある面からみれば、kill には「やっつける」の訳語が当てはまることもある。

 姓の Killer は十三世紀の初出で、おそらく、屠殺業関係の人に付いていたのだろう。当時の屠殺業者は家畜の頭を叩いて気絶させるか、殺してから肉を捌いていたのだろう。語幹部の母音は一定でなかったと推
定されているが、k-l の音素は印欧祖語の語感をとどめている。
 kill の最多用法義は「生命を奪う」ことであるが、派生義を含めると、「対象の主体的活動・機能・本質・有意義性、または、存在自体を (完全に) 消滅させる」ことを意味している。

Soldiers were either killed or wounded in the battle.
戦場の兵士達は殺されるか、負傷するかのどちらかであった。

The Union loss was 9 killed, 15 wounded.
連邦側の被害は死者九名、負傷者十五名であった。

Fire at Major Pipeline Killed 2.
大パイプラインで火災発生、二人死亡。

He only thinks to kill himself.
彼は自殺することしか考えていない。

How to kill a dragon.
竜を退治する方法。

What killed dinosaurs?
恐竜を絶滅させたのは何か。

Kill two birds with one stone.
一石二鳥。

Love me or kill me.
愛してくれないなら、殺してちょうだい。

The herbicide was used to kill weed.
その除草剤は雑草を枯らすために使用されていた。

You kill hours at the telephone.
暇つぶしの長電話を延々としている。

I was killed in this trip.
出張でもうくたくただよ。

Don't kill yourself lifting so heavy things at once.
そんなに重たいものを一気に背負わなくたっていいよ。

My headache is killing me.
頭が割れんばかりに痛い。

The pill will kill your pain.
この薬で痛みは大分和らぐでしょう。

British capitalism killed slavery.
英国の資本主義は奴隷制を消滅させた。

"You must add plenty of salt and lemon," said he.
"You want me to kill the taste!"
"No, enrich the taste!"
「塩とレモンはたっぷり入れないといけないよ」と彼は言った。
「味が台無しになっちゃうわよ」
「いや、濃厚な味わいになる」

In the Senate the bill was killed on the last day of the session.
上院の審議最終日にこの法案は破棄されてしまった。

If there is an error connecting to the database, then kill the script and display the error message to the user.
データベースへの接続にエラーがあるときは、スクリプトは無効にして、ユーザー向けにエラーメッセージを表示せよ。


 おもしろいのは「爆笑させる」ことを指す口語的用法である。

His joke killed me!
あいつのジョークはメチャクチャ面白かった。


 これは「心を笑いで支配してその本来の機能を奪う」という連想でできた表現方法だろう。従って、魅了したり、強く印象に残るものを表現するときも killkiller が使われている。

He's dressed to kill.
彼はとってもおしゃれな着こなしをしている。
(彼は隙のない服装をしている)

Mac OS X killer app.
マックOS Xの超便利ソフト。


 自動詞で使うとき、つまり、目的語を省略するときは、「人を殺す」の意味が多い。

Children who kill.
殺人を犯す子供たち。

Thou shalt not kill.
汝殺すべからず。

Licence to kill.
殺人許可書。


 Killer は殺したり、破壊したり、とどめを刺す主体をいうのに対して、名詞 kill は行為・対象 (獲物) ・標的・(特に格闘やハードワークの) 最終段階などを指す。

The serial killer terrorized London in 1888.
一八八八年、連続殺人鬼がロンドンを恐怖に陥れた。

The killer cat can't wait for the mouse to come.
殺し屋の猫は鼠がくるのを待っていられない。

The search for a killer asteroid.
壊滅的打撃を与える小惑星の探索。
  
Mac OS X Tiger killer tips.
Mac OS X Tiger を使いこなすコツ。

An arrow hit the kill.
矢が獲物に命中した。

When a predator is on the kill, he just bites down hard and then shakes his prey to death.
肉食動物が狩りでとどめをさすときは、激しく食らいついて、獲物が死ぬまで揺さぶりをかける。

 
 ゲルマン語派の同系語としては quellquail があり、直接的には印欧祖語の派生義「つらぬく (to pierce)」からきている。

 印欧祖語に発しギリシャ語からロマンス諸語を経由して英単語になった単語も沢山ある。ball 「舞踏会」はラテン語 ballare 「踊る (to dance)」からフランス語に派生したものだが、元々はギリシャ語 ballein 「なげる (to throw)」が源である。これと同系の ballet「バレー」は同じラテン語から、イタリア語が出来て、フランス語に借用され、最終的に英語になった。ballerina 「バレリーナ」は ballet と同系。やや経路が違って、ラテン語からプロヴァンス語を経由してフランス語に借入された語に ballad 「バラード、舞踏曲」がある。踊りというのはぴょんぴょん飛んだり跳ねたりするから、「なげる」から「おどる」が出来たとしても突飛な発想とは思われない。印欧祖語の gw-l はギリシャ語の b-l に変化したが、それと同時に南欧の人々は北欧の人々と異なる意味に発展させていった。この系列において、ギリシャ語にもっとも近い語義を有する英単語は ballista 「弩号」である。

 同じく devil 「悪魔」はギリシャ語からラテン語を経由して英語になった単語の一つだが、ギリシャ語 diaballein は「中傷する (to slander)」であり、分解して解釈すると、「なげつける (dia- "across, through" & ballein "to hurl)」が原義。ギリシャ人は言葉の性質を、飛んでいくもの、放たれるものと解釈していたのだろう。

 devil と密接な繋がりがある emblem 「表象、標章」は、ギリシャ emballein (en- はinに相当) から。即ち、「投げ込む、はめ込む (to set in)」が語源。(b や p の直前の n は m になる。後に記す symbol も同じ変化)

 「たとえ話、寓話」を指す parable は para- 「脇に (beside)」と ballein の組み合わせで、「ならべる (to set beside)」が「喩える (to compare)」に発達した。

 「放物線、パラボラ」を意味する parabola は近代ラテン語から入った英単語で、後期ラテン語 parabola 「対話」に由来するが、元をたどればギリシャ語であり、parable と同じ構成である。parley 「討論、話し合い」も parable と同源で、parlor 「談話室」や parliament「議会、国会」も同じ眷属である。

 problem 「問題」は目の「前に投げだされたもの」というイメージから。pro- は「前に」を指し、ギリシャ語動詞 proballein (to put forward or throw before) から構成されている。

 symbol 「シンボル」はギリシャ語動詞 symballein 「まとめる (to put together)」からで、syn- は漢字でいえば、「共 (together)」である。ギリシャ語名詞形 symbolon は「身分を示す印 (token for identification)」のことであった。(sympathy, synchronicity 参照)

 使用頻度の低いものまで含めると、まだまだ *gwel- の子孫は見つかるが、英単語になったのはすべてゲルマンとギリシャ経由のものである。

 最近巷で聞く metabolic「メタボリック、新陳代謝の、物質交換の」は、語源的には、meta- 「〜と、〜の向こうへ、〜の間を (with,
after, between)」と b-l の要素から出来ていて、動詞的には、向こう側へと素早く移されることであり、形容詞としての原義は「著しく変化した」状態を指している。

 ball 「玉、ボール」は、投げることに関係するが、別語源で、印欧祖語 *bhel- 「ふくれる (to swell)」から出来た単語である。

 ところで、日本語の「殺す」は「凝る」や「懲らしめる」と語源的に関係があるとされている。「凝る」は固めたり、固まることで、「肩こり」の「こり」でもある。方言では叩いて固めることを「こる」ということもあるから、確証を得るには同様の音韻変化が広範囲に認められなければならないが、印欧祖語 *gwel- (英語 kill ) と「コロス ( 殺す)」が語源的に繋がっている可能性も否定できないだろう。

Info

Friday, December 07, 2007

shaggy-dog story

 「もじゃもじゃ犬の話}」とは、聞いている人よりも話している人が楽しんでいるようなオチのある他愛のない馬鹿話のこと。ある種のオチのあるこの手の冗句は一九四〇年代に原形ができた。
 Brewer's はパートリッジ (Eric Partridge) が収録した話を採用している。中年の男がニューファンドランド (毛もくじゃらの犬種) と列車の中でチェスをしているのだが、ロンドンに着くまでに決着が着いた。勝ったのは犬である。ゲームを観戦していた男は、大した犬だと驚くが、チェスで負けてしまった男は、大したことはない、この勝負の前におれの方が二勝してるんだ、という。

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