Thursday, July 07, 2011

ウォール街

ウォール街

映画『ウォール街』と『ウォール街2』に登場するゴードン・ゲッコーは、「金は眠らない (money doesn't sleep)」や「貪欲は善  (Greed is good) 」を座右の銘としている守銭奴で、前作では商売仇や買収対象企業の内部情報を不正に入手してボロ儲けする生粋の詐欺師であった。当初、その実情は誰にも知られていなかったので、世間的には遣り手の相場師としてのカリスマ性を誇っていた。前作でそのカリスマ性に憧れたのが若き証券マンのバド・フォックスである。バドはゲッコーにあこがれ、苦心の末に認められ、言葉巧みに操られるようになり、共に不正な手段で荒稼ぎしたが、父親が長年勤めた航空会社の取引で、本来は立て直す計画のはずなのに、切り刻んで売り払い、キャピタルゲインを得ようとこっそりと画策していたゲッコーの本性に気付き、逆にペテンにかけて、最終的には自分自身を犠牲にしながら、ゲッコーの正体を世間に知らしめて当局に売り渡したのだった。

 『
1』は1で、『2』は『2』でそれぞれおもしろい。『1』ではまずコンゲーム的な面白さがある。そして何よりこの映画はバド・フォックスなる人物が金持ちになることに憧れるが、カリスマ相場師の正体を知り、悪に染まり切ることを拒む、人間の普遍的精神が描かれているのだと思う。バドの父親は、プラベートでもチャーリー・シーンの父親であるマーチン・シーンが演じたが、実直な技術者で、はなっからゲッコーが胡散臭いことを見抜いている。バドはなんとかゲッコーを父に認めさせようとするが、最後には父の元に帰っていく。

 一九八〇年代当時、オリバー・ストーン監督は、ベトナム戦争を描いた『プラトーン』、ジョン・F・ケネディ大統領の暗殺の真相を探った『JFK』、そして、『ウォール街』を現代のアメリカを描く三部作として創作したが、『ウォール街2』では、政府による金融機関の救済を「社会主義だ」と論評するシーンがあり、その台詞は大事なメッセージなのだろう。

 1はレーガノミクスの活況期、『2』は住宅バブル期からその崩壊後の出来事。1で交渉のためウォール街を訪れるのは日本人だが、『2』では中国人である。

 『2』に登場するジェイコプはミレニアル世代で、1で主役であった中産階級出身のバドに比べてがつがつした感じがない。ジェイコブは看護婦の息子だが、その母親は不動産投資で一旗揚げようと四苦八苦している。

 ゲッコーの娘ウィニーは、兄が麻薬で死んだのは父親のせいだと思っているので、父とは険悪な仲である。ウィニーとジェイコブは婚約している。ジェイコブは彼女の父親ゴードン・ゲッコーを尊敬している。

 ゲッコーの予言どおり、いわゆるハウジングバブルがはじけ、金融街はパニックに陥るが、マクロ経済学的に重要な事件も、この映画の家族の絆を修復するというメインプロットからすると、たいした出来事ではないように感じる。

 ゴードン・ゲッコーは自己中心で、欲深く、執念深く、平気で人を騙す冷酷な守銭奴で、どこか哀れだ。ただひとつだけ魅力的な点はある。それはエネルギッシュに仕事に打ち込むということだ。仕事の種類はどうあれ、その打ち込み方は半端なものではない。時は金なりとはゲッコーのためにある諺だ。実際、ゲッコー本人も時間は貴重だといっている。刑務所にぶちこまれて何千時間だか何万時間だかを損したというようなこともいっている。

 ジェイコブにとって投資とは、核融合の研究のような成功するかどうかわからない新技術を確立しようとしている人たちに資金を提供することだが、ゴードン・ゲッコーにとっては値段の変動を利用して儲けることである。

 一度裏切られたジェイコブは二つの目的でゲッコーに会いに行く。一つは核融合に投資してもらう為。もう一つは家族を作る為。この目的は一つ果たせれば、二つとも果たされる。

 ゴードン・ゲッコーは核融合に投資する。

 ジェイコブはバブルを肯定的に受け止めている。

 『ウォール街2』のキャッチコピーは「あなたの財産になる」である。マイレートはストロングバイ。

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